彦根犬猫病院 Hikone Animal Hospital

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2021年8月27日

がん学会参加報告&犬の多中心型リンパ腫について

こんにちは。
獣医師の秋山牧子です。

 

今年の夏、日本獣医がん学会がオンラインで開催され、参加しました。
今回のメインテーマは「犬の多中心型リンパ腫」でした。

 

「リンパ腫」とは、白血球のひとつである、リンパ球が腫瘍性に増殖する病気です。
犬のリンパ腫で最も多いのが「多中心型」とされており、特徴としては、体表のリンパ節が腫れて発見されることが多いです。
そのほか、消化器型(胃腸管)リンパ腫、皮膚型リンパ腫、縦郭リンパ腫、鼻腔リンパ腫、腎リンパ腫、中枢神経リンパ腫、など様々なタイプがあります。猫のリンパ腫で多いのは消化器型です。

 

多中心型リンパ腫のわんちゃんは、目に見える異常はリンパ節の腫れだけで、初期には何も他に症状が出ていない子もいます。
一方で、元気がなかったり、食欲が落ちていたり、リンパ節の腫れ以外に症状が出ており、明らかにおかしいと飼い主様が感じられて来院される子もいます。

 

多中心型リンパ腫の治療は化学療法、抗がん剤です。
1週間から2週間に1回、抗がん剤の注射を行います。
期間は半年間がひとつの目安です。
抗がん剤=つらい副作用というイメージが強いかもしれませんが、なるべく重大な副作用が出ないように、予防をしながら治療をすすめます。
高悪性度リンパ腫で治療を行った場合、1年生存率が50%、2年生存率が20%、3年生存率が10%といわれています。
無治療の場合の予後は4~6週間といわれており、治療を行わない場合の余命は非常に短い病気です。
あくまで「多中心型」の「高悪性度」の場合であり、タイプや悪性度により治療内容や予後は変わります。

 

抗がん剤を選択しない場合にも、リンパ腫によるつらい症状を緩和する治療としてステロイドの飲み薬や注射などの方法はありますので、
何もしない、ではなく、「余命を延ばすことはできないけど、残り限られた時間を少しでも苦しまないように過ごさせてあげる方法」という選択肢も含め、ご家族とご相談できればと思います。

 

大切なことは、なるべく早く病気を見つけてあげることです。
定期的に体を触っていただき、今までなかったしこりや腫れがみつかった際は、ご来院ください。

 

ただ、リンパ節の腫れ=リンパ腫ではありません。
皮膚炎や、リンパ腫以外の腫瘍の転移、感染症のこともあります。
リンパ節ではなく、脂肪腫(良性腫瘍)などの腫瘍や、顔まわりの場合は唾液腺(正常な組織)ということもあります。

 
 

細い針をさして細胞を調べる検査をすることが、最初のステップです。

 

「しこりがあるかも?」

 

と思われたら、様子をみる前に、まずはご相談ください。

 
 

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