彦根犬猫病院 Hikone Animal Hospital

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2022年8月25日

腫瘍科コラム・膀胱の移行上皮癌について

こんにちは。

獣医師の秋山牧子です。

 

本日は、膀胱の移行上皮癌について投稿します。

 

・おしっこに血が混じる

・少しずつ何回もおしっこをする

・おしっこが出づらそう

 

こうした症状は、膀胱炎や尿石症でもみられますが、尿路にできる腫瘍でも同じ症状が出ます。

 

膀胱の移行上皮癌は、犬と猫を比較すると、犬に多く、猫では稀です。

膀胱にできものがある場合、

犬では移行上皮癌(←悪性)や移行上皮乳頭腫(←良性)が多く、

猫では炎症によってできた組織(肉芽組織など、腫瘍ではないもの)が多くを占めます。

 

中高齢のわんちゃんで上記の症状がみられた場合は、尿検査だけでなく、超音波検査も受けていただくことをおすすめします。

 

超音波検査をすることで、膀胱の腫瘍を見つけることができます。

一般的な尿検査だけでは、腫瘍の有無はわかりません。

 

超音波検査で発見し、腫瘍が疑わしい場合は、尿道カテーテルを通してしこりを一部採取し、病理検査を行います。

 

膀胱の移行上皮癌は、

膀胱の中に広がりやすい(浸潤しやすい)、

全身に広がりやすい(転移しやすい)、

手術しづらい場所にできると大がかりな手術になる(膀胱尿道全摘出など)、

全摘出をしても根治率が低い、といった点から、

内科治療が重視されています。

 

内科治療には「非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)」といって、一般的に消炎鎮痛剤(痛み止め)として処方する飲み薬を使用します。

抗がん剤を併用することもありますが、NSAIDs単独でも一定の効果があります。

 

 

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NSAIDsがなぜ腫瘍に効くのか?

 

消炎鎮痛剤は、細胞のCOX(シクロオキシゲナーゼ・コックス)という酵素を阻害して(邪魔をして)炎症を抑えます。

腫瘍にCOXがたくさんあることが発見され(特に移行上皮癌)、腫瘍の増殖に必要なことがわかりました。

消炎鎮痛剤の持つCOXを阻害する作用を利用して、腫瘍の増殖も抑えることができるのでは?

という発見から、

検証をしたところ、

効果が認められ、

腫瘍の治療においても活躍するようになったとされています。

 

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犬の移行上皮癌の生存期間(中央値)は、無治療の場合2ヶ月、治療を行った場合6〜12ヶ月です。

飲み薬(NSAIDs)の治療は、強い副作用はないので、お薬を飲むことで、一緒に過ごす時間がなるべく増えてほしいなと思います。

 

先日の日本獣医がん学会では、新しい治療法が紹介されました。

ラパチニブという分子標的薬で、より良い効果が報告されています。

 

 

おしっこの色、回数、しぐさなど、いつもと変わった様子がありましたら、早めにご来院ください。

 

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