彦根犬猫病院 Hikone Animal Hospital

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2023年2月17日

がん学会参加報告&緩和ケアについて

こんにちは。

彦根犬猫病院スタッフの秋山牧子です。

 

先日、大阪で開催された獣医がん学会に参加しました。

 

今まで、コロナ禍のため会場とインターネットの同時開催でしたが、今回から認定医は(資格更新の必要条件として)会場に行かなければならなくなり、公私ともに遠出を控えていたのですが、数年ぶりに電車に乗りでかけました。

 

 

会場のホテルニューオータニです。

 

 

今回のメインテーマは「がん終末期のケア」であり、がんに対する緩和ケア・終末期ケアについての講演がありました。

 

緩和ケア・終末期ケアは、獣医になった当初より積極的に勉強してきたことでした。

 

 

緩和ケアとは、身体的・精神的苦痛をやわらげ、患者さんとご家族のQOL(人生の質・生活の質)を向上するためにおこなうケアです。

 

以前は、積極的な治療のあとに緩和ケアを行うという概念でしたが、

近年では、がん治療の初期段階から積極的な治療と一緒に行う、と考えられています。

 

 

 

 

また、終末期ケア(ターミナルケア)は、治癒や延命が目的ではなく、余命がわずかとなった時期の苦痛を除去するためにおこなうケアを指します。

 

緩和ケアでは痛みをとる治療が必要となるケースがありますが、「痛み止め」と一口にいっても、さまざまな種類のお薬があり、当院にもいろいろな種類の鎮痛薬を用意しています。

また、飲み薬や注射薬だけでなく、貼る薬もあります。

 

貼る薬は、フェンタニルパッチといって、モルヒネと同じ仲間のフェンタニルという鎮痛薬を、皮膚から吸収させるテープタイプの製剤になります。

 

3~4日に一度の貼り換えが必要ですが、飲み薬が難しい子には、とても良い薬です。

 

また、薬だけではなく、

 

・緩和外科(根治治療ではなく疼痛をとるための手術)

・緩和放射線(痛みをとるための放射線治療)

・緩和治療としての化学療法(症状を和らげるための化学療法)

 

といった選択肢もあります。

 

気持ち悪そうにしたり嘔吐がみられる子に気持ち悪さをとるお薬を使用すること。

呼吸状態の良くない子に自宅用の酸素室を用意してあげること。

栄養や水分をとりづらい子に栄養学的なサポートをすることも、緩和ケアの一貫です。

 

口から食べることができない時には、カテーテルを設置することもあります。

管を通してご飯、というと、いやなイメージがあるかもしれませんが、

がんセンターで研修中、先輩の担当している患者さんで、胃にチューブを入れている猫ちゃんがいました。

お腹がすくと、ご飯を入れてほしいと飼い主さんのところに行き、チューブからご飯を入れてもらうと、とても嬉しそうにして、ご機嫌になるというお話を飼い主さんから聞き、チューブでの食事が、即ち不幸、というわけではないと感じました。

 

講演では、動物の看病や介護をする飼い主さんの負担を軽減するために、デイサービスやショートステイのように病院で短期間だけお預かりする方法が紹介されていました。

 

また、緩和ケアは獣医師、病院スタッフ、ご家族が同じ目標に向かって、チームとなり、行うべきだというお話がありました。

 

 

12年前、名古屋で勤務医をしていた時に、「癌患者の緩和治療〜獣医師がさじを投げる前にできること〜」というセミナーをききました。

 

「獣医師として、動物とご家族のために、最後まで何ができるかを考えること。」

 

「ご家族の話に耳を傾けること。」

 

今でも当時のセミナーの内容は心に残っています。

 

 

☆長くなりましたので、以下はご興味のある方だけお読みください(^^;)ちょっとマニアックな、「診断法について」の話になります☆

 

学会では、日本小動物がんセンターでお世話になった先生が主催するシンポジウムに参加しました。

 

ひとりひとりの患者さんについて、何の病気を疑い、どのような考え方で診断や治療をすすめるのか。

がんセンターの先生、画像診断、細胞診断、病理組織診断の先生方と参加者全員でディスカッションをしながら診断のステップについて理解を深める内容でした。

 

腫瘍が疑わしい状況で、知識が乏しい時には、

「とりあえず検査」

「とりあえず手術」

という思考になりがちです。

 

それでも結果的に問題ないという時もありますが、患者さんにとって本当に必要な検査・治療を提供するためには、

動物種、品種、年齢、性別、発生部位、既往歴などから可能性のある病気(鑑別診断)を考え、そのためには何が必要か。

患者さんにとって不利益となるような不要なことはせず、診断のために必要なことはとりこぼさず、検査や治療を適切にすすめていかなければなりません。

(この診断の考え方は腫瘍科に限った話ではありませんが、特に腫瘍科では「この腫瘍になりやすい犬種」「この場所にできやすい腫瘍」などの知識をもった上で、鑑別診断を頭に入れて、診断をすすめることがとても重要になります。)

 

上記の診断方法は「仮説演繹法を用いた診断ステップ」と呼ばれ、研修医時代に徹底的にたたきこまれたことであり、日々意識していることです。

 

☆☆☆

 

お読み頂きありがとうございました。

 

 

久しぶりの遠出にハラハラしましたが、参加できてよかったです。

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