彦根犬猫病院 Hikone Animal Hospital

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2023年8月29日

しこりには細胞診を

こんにちは。

獣医師の秋山牧子です。

 

日中はまだまだ暑いですが、夜は秋の虫の声がきこえるようになりました。

 

 

体の表面にいぼやしこりをみつけた時、

良いものか・悪いものか。

様子をみていいのか・手術でとった方がいいのか。

知りたいところですよね。

 

いぼやしこりは、

炎症や良性の腫瘍(毛包腫瘍、脂肪腫、皮脂腺腫など)の場合と

悪性の腫瘍(肥満細胞腫、軟部組織肉腫、扁平上皮癌など)の場合があります。

 

しこりの見た目や増大速度などの情報も大切ですが、

特に肥満細胞腫(悪性腫瘍)は見た目が様々で、一見すると悪くないようにみえることも多いです。

 

そのしこりを手術でとり病理組織検査をすれば確定診断はできるのですが、いきなり全身麻酔をかけて手術という選択は、動物に余計な負担をかける可能性があるので最初には選択しません。

まずは「細胞診」という検査をおこなうことが一般的です。

 

この検査により、

・様子をみてよいのか、治療は必要か

・治療する場合は内科治療か、外科治療か

・手術でとる場合はどのくらいのマージン(正常な部位)を確保すべきなのか

を判断します。

 

細胞診には、注射針をつかいます。

 

採血や注射で使用する針と同じ細い針です。

できものに針をさし、細胞を採取します。

スライドガラスにのせて、染色をします。

顕微鏡で細胞を確認します。

 

細胞診のメリット

・麻酔がいらない、患者さんの負担が少ない

・短時間で結果を確認できる(※)

※院内で診断する場合は診察の際に結果をお伝えしています。検査機関(細胞診専門の先生)への依頼が必要な場合は、結果報告まで1週間ほど時間を要します。

 

細胞診のデメリット

・細胞が適切な量とれないと診断ができない

・確定診断は病理組織検査が必要

 

細胞診の結果から、

様子をみるか、内科治療をおこなうか、手術でとるか、とる場合はマージン(正常部位)をどれくらい確保してとる必要があるか

を判断します。

(細胞診の結果をみて、全身麻酔ではなく局所麻酔でとることもあります。)

 

ものすごく小さく(1mm以下)かつ平坦な場合は細胞が十分な量とれないので、もう少し大きくなってから検査しましょう、となることもあります。

 

 

このような場合は、一度細胞診を受けていただくことをおすすめします。(通常の診察でご予約をおとりください。)

 

あくまで針の中に入った細胞だけで診断するので、

万能ではないのですが、

最初の一歩として非常に価値のある検査です。

 

 

~余談~

 

 

日本小動物がんセンターで研修医をするまでは、しこりに対して

「まずはとりあえずさしてみる(細胞診をする)」

という考えでした。

細胞を採取する→細胞をみる→考える

という順序です。

 

 

しかし、研修医生活を経て、正しいプロセスは

まず考える(可能性の高い順に病気を予想する)→細胞を採取する→細胞をみる→考える(確認する)

だと学びました。

 

 

品種、年齢、性別、部位、発生の様子などにより考える鑑別疾患は異なります。

 

「しこりに対して→細胞診をする。」

 

一見、外側からみているとやっていることは同じなのですが、予め鑑別疾患を頭に入れておくと、

この場合〇〇(病名)の可能性が高い、〇〇は細胞が壊れやすいから優しく細胞を扱ったほうがよい、と採取の段階で適切な取り扱いができたり、

 

この部位の場合A・B・C(病名)の可能性があり、それぞれ特徴的な細胞が出やすい(と検査の前に考える)

→細胞診をみてAに特徴的な細胞が出ている

→Aの疑いが強いと診断する

というように、正確な診断につながりやすくなります。

 

 

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