彦根犬猫病院 Hikone Animal Hospital

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2022年4月23日

がん学会参加報告&猫の消化器型リンパ腫について

こんにちは。
獣医師の秋山牧子です。

 

今年の2月に、日本獣医がん学会がオンラインで開催され、
その中で猫のリンパ腫についてのシンポジウムがありました。

 

猫のリンパ腫は、病気が発生する場所によって、
消化器(胃腸)型
縦隔型
節性
節外型(腎・鼻腔・喉頭/気管・皮膚・中枢神経)
などに分類されます。

 

今回は、猫のリンパ腫の中で近年増加している、消化器型リンパ腫についてお話をします。

 

【猫の消化器型リンパ腫について】
 

症状としては、
・吐く
・食欲が落ちる
・体重が痩せてくる
などが多いです。
また、軟便や下痢がみられる子もいます。

 

消化器型リンパ腫には、「低悪性度」「中間悪性度」「高悪性度」と、悪性度による分類があり、同じ病気でも、その性格が全く違います。
低悪性度リンパ腫の経過は緩やかであることが多く、高悪性度リンパ腫の経過は非常に急速なことがあります。

 

高齢の猫ちゃんで、吐く頻度が増えてきた・元気や食欲がない・痩せてきた、という症状でご来院された際は、様々な病気を可能性として考えます。

 

例として、
・腎臓の機能の低下
・膵臓や肝臓の炎症
・ホルモンの異常(甲状腺機能亢進症)
・腫瘍(胃腸に発生する腫瘍には、リンパ腫の他に、肥満細胞腫や腺癌などもあります。猫ちゃんでは、その中でも、リンパ腫が最も発生頻度が高い消化管腫瘍です。)
などが原因として考えられます。
中には、一時的な胃腸炎で、内科治療を行うことで症状が良くなる患者さんもおられます。
上記の病態が重なっている患者さんもおられます。

 

身体検査でお腹の中にしこりが触知され、発見することもあります。

 

必要に応じて、血液検査や画像検査をおこないます。

 

消化器型リンパ腫の子の多くは、超音波検査(エコー検査)で消化管やお腹の中のリンパ節に異常がみつかります。
超音波検査は、麻酔も要らず、痛みもなく、優しい検査です。
リンパ腫の病変は、お腹のなかにしこりをつくるタイプから、消化管の粘膜が一部厚くなるタイプまで、多様です。

 

異常がみられた場合は、最終的な診断をするために、次の検査に進みます。
最終的な診断が必要な理由は、腫瘍の種類や悪性度により、治療法や予後が大きく異なるためです。
診断のために、異常がある場所の細胞や組織をとります。

 

エコーをみながら、採血や注射の時に使う針と同じ細い針をお腹に刺して細胞を少しとるだけで診断ができる場合(針生検)と、
内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を行いカメラで観察しながら組織を採取して診断する場合と、
手術で粘膜の組織を直接採取して診断する場合があります。

 

悪い細胞は、顕微鏡で拡大して観察すると、悪い顔をしている(増殖が活発な様子がみられる)ので、針生検だけで診断がつくこともあります。
低悪性度の細胞は、細胞だけでは正常な細胞と区別がつきづらく、組織生検まで必要なケースが多いです。

 

治療は化学療法(抗がん剤)ですが、先に手術が適応となるケースもあります。

 

また、化学療法にも、注射で抗がん剤を投与する方法や、のみぐすりで治療する方法など、それぞれの病気の状態によって、最適な治療法はかわります。

 

積極的な治療をご希望されない場合にも、緩和治療として苦痛をやわらげる方法はありますので、
どうかご相談ください。

 

犬の多中心型リンパ腫については過去の記事(こちら)をご覧ください。

 

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